竹山団地の人工池を見ずして団地好きを語るなかれ
小生団地好きを名乗っているにも関わらず、完全にノーマークでした。お恥ずかしい限りです。
神奈川県住宅供給公社の竹山団地のことです。
1971年の完成です。建設は鹿島建築で、現在の総戸数は2471戸だそうです。2800戸という記載もあったりして、もしかしたら竣工当時は今よりも団地数が多かったかもしれません。いずれにしてもマンモスコミュニティですね。南北に細長く、団地入口から端まで約1.1kmあります。また、丘陵地に造成されており、団地内の高低差はかなりのものです。
そして、竹山団地の最大の特徴がセンターゾーンにある人工池です。書き間違えではありません。これ人工池だそうです。
センターゾーンの設計は神奈川で特徴的なモダニズム建築を残しつつ、歴史的な評価が進んでいない群建築研究所です。ホームページに竹山団地に関する記載 があったので転記します。
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神奈川県住宅供給公社の竹山団地センターゾーンの場合には、中央に約1haの人工湖が計画された。以前の地形が谷戸・水田であったことから、その環境が尊重され、開発に伴う雨水の調整機能も兼ね備えて造成された。センターゾーンに必要な各種施設、全てこの人工湖に面するように配置され、近年話題になっているウォーター・フロントの良好な環境を形成している。生態系の完結した集合である水辺の自然を居住環境に取り入れた先進的な計画であり、このような人工湖を持つ団地は我が国にはまだ出現していない。--------------------------------------------------------------------------------
この人工池の存在が竹山団地のランドマークとなっており、住民を惹きつけているだろうことは想像に難くありません。
上の写真をちょっとアップするとこんな感じです。1階部分が吹き抜けになっおり、反対側にある道路から池側を見ることができます。わざわざこのような複雑な構造にしたのは、人工池の存在を強調するためだと思います。また地下一階部分(?)は商店街になっています。
さらにアップです。こちらは向かって左側の3101号棟ですが、特異な構造がよくわかりますね。果たしてこのようにせり出す必要があったのかどうかちょっと質問しそうになってしまいますが、それは野暮というものですね。
真横からみるとこんな感じです。写真の真ん中左下にあるスロープはあとで説明しますが2重構造になっていて、とてもユニークです。右下のでっぱりの構造物はトイレの入口です。
真横からの写真のアップです。一階部分は各住居へのエントランスと駐輪場と駐車場になっています。
各住居へのエントランスです。アールがかわいいですが、かなり狭い印象を受けます。1階部分のほぼ中央にあり、他の棟は構造が全く異なります。僕の予想ですが、建物のプロポーションをよく見せるためこのようは構造にしたのではないかと思います。
ということで、らせん階段になってます。団地でらせん階段なのは他にはスターハウスぐらいではないでしょうか?
人工池の反対側からです。
<スロープ>
3102号棟と3103号棟をつないでいるスロープの構造がとても面白いんです。2重構造になっていて、外周は高低差がゆるやかなスロープになっています。内側は階段になっており、勾配は急ですが、動線としては短いわけですね。
横から見るとこんな感じです。僕は最初よくわからなくて、階段を降りてから上る側のスロープ側に行ったら
元の場所に戻ってしまいました。無限ループ。
真横から見たところです。外周が完全なスロープにはなっていないのは、自転車とかで行こうとすると危ないからですかね。
<スロープ2>
これは3101号棟がわにあるスロープというか階段ですが、モダニズム全開のデザインが素敵すぎます。
プレキャストというのは工場で部品を作って、現地では組み立てるだけという工法でコストと納期を短縮させる工法です。僕は文系なのでちょっと自信ないんですが、これはおそらくプレキャスト工法だと思います。梁の部分を切りそろえることなくデザインとして使用しているわけですね。(たぶん)
メタボリズム建築との親和性も感じてしまいますね。
パイプが気にります。他の場所ではこのような構造は見受けられませんでした。
<近隣住区論6点セット>
当時の大規模開発団地は近隣住区論の影響が強いわけですが、竹山団地は僕の中での近隣住区論6点セット「小学校」「幼稚園」「商店街」「病院」「銀行」「郵便局」がすべてそろっているところが感動を呼ぶところです。
この案内図を見て興奮しているのは僕くらいでしょうが、当時の理念が珍しくまだ生きているんですね。
あまり特徴がないと思って一枚だけ写真を撮っただけなのですが、地図で見ると校舎はL字型を重ねたような構造になっていて、もしかしたら興味深い建物だった可能性があります。もうちょっと見ておけばよかったかも。
なんと幼稚園は2つあります。こちらは竹山幼稚園。
このとがった部分のオブジェ(?)がたまりせんね。科学万能主義と子供の無限の可能性が表象表現としてよくあらわされていると思います。大阪万博のソヴィエト館を彷彿させるものがありますね。(と思っているの僕だけだと思いますが)
こちらも幾何学的な構造がたまりません。
こちらは竹山南幼稚園です。
竹山幼稚園に比べて運動場が無駄に広いですね。奥にスタンドも見えます。
堂々たる商店街のラインナップ。団地内商店街はだいたいシャッター通りになっているか、営業していても相当に寂れているかのどちらかですが、竹山団地内の商店街は珍しく活気があります。
おそらく2000戸以上という戸数、坂が多いという地形、徒歩圏にライバルとなる複合ショッピングセンターがない、A-COOPという商店街の旗艦店が存在する、といった複合的な要素が重なり、近隣住区論が想定した日常の買い物は団地内でという想定が今でも有効性を持っています。
A-COOPです。この充実した商品群もいいですが、なんといってもこの梁(なんでしょうか)ですよね。このマッシブサはたまりませんね。こういうのをますらをぶりと言うんでしょうね。(絶対違う)
天井の正方形のユニットもプレキャストなんでしょうけど、構造をあえて見せているところがたまりません。バイトするならここでしたいです。
こちらは商店街ですね。向かって左側が人工池になります。
和菓子の大平屋。只今世間話中。。
鳥の巣&糞対策。
竹山病院です。地域密着の総合病院のようです。
上の案内図と同じ位置にあったので、竣工当時から場所が変わっていないと思います。
このように日常生活で必要なインフラは団地内に設けておくというのが近隣住区論の特徴のひとつです。だいたいの大規模団地ではモータリゼーションの発達に伴って近隣住区論の理念は古いものとなってしまったわけですが、竹山団地特有の環境と、それぞれの店舗の努力によってコミュニティセンターとしての機能を今も果たしているのだと思います。
<ポイントハウス>
さて、ようやく団地です。ポイントハウス、中層棟、高層棟とありますが、やはりポイントハウスのかわいさはたまりませんね。この写真の一番手前は4201号棟で、7棟が並んで立っています。壮観です。
4207号棟です。真ん中に階段があってそこから左右に分かれているわけですね。ちょっと張り出しているベランダがかわいいですね。
こちらは(たぶん)2206号棟です。4棟並びで構造はおそらく同じですが、外壁塗装の時期が違うのか、雰囲気がまた異なりますね。
2207号棟です。周囲の空間に余裕があるのがこの時期の団地の特徴ですね。贅沢です。
センターゾーンに手をかけすぎた反動なのか、非常にオーソドックスな作りです。でも、同じ中層棟なのに階段部分の両側に柱がせり出しているものとそうでないものがあります。せり出しているパターン(上の2つ)も、それぞれちょっとデザインが異なっているところが興味深いですね。
<高層棟>
3104,3105.3106の3棟が高層棟になります。
こちらは人工池の反対側から。
3106号棟は段差があります。段差フェチにはたまりません。
そんな段差フェチの方のために、段差部分のアップ(笑)
かなりの高低差ですね。
やはり高層棟になると強度が必要なのか、柱と梁が目立ってきます。
こちらは3105号棟。すっきりとした佇まい。
<オープンルーム>
なんとオープンルームが開催されていたのでちょっと覗いてみました。というか580万!頑張ればキャッシュで買えそうです。ちょっと本気で考えてしまいましたよ。
玄関です。写真だと広く見えますが、実際は狭めの印象です。
6畳の和室です。
こちらも6畳の和室。ふすまの破れた感じがとても昭和を感じますね。
こちらは4畳の和室。というか4室中和室が3部屋。
キッチンです。リフォームが必要でしょうか。でも580万ですから。
窓からの眺めです。公園があるので、眺望はいいですよ。いかがですか、580万。(しつこい)
なんと驚きのユニットバスです。でも・・(以下略)
団地好きブログでバスまで載せたのはあまりないと思います。(笑)トイレの写真も撮りましたがさすがにやめておきます。
<公園>
すでにかなりお腹いっぱいですが、公園もかなり見どころいっぱいです。こちらはオーソドックスな公園ですね。
堂々の2基編成の滑り台です。予算が余っていたのでしょうか?興味は尽きませんが、誰も遊んでいません。
おそらく豚さんです。手前の台座にもきっと何か動物さんがいたんでしょう。情報求む(笑)
竹山中公園の裸足で歩くと健康になるやつ(正式名称失念)です。記念にやっとけばよかったかな。
これも竹山中公園です。まるで森の中。とても団地内の公園とは思えないですね。
こちらは竹山2丁目公園です。ただっぴろいです。
上の写真の奥に見える階段です。このくらいの長い階段が至る所にあります。
2丁目公園には池もありますよ。
photoshopで作ってみました。壁紙にいかがですか?
というわけで竹山団地のレポでした。記事の後半に疲れがみえて、文字数が減ってますがご容赦ください(笑)
長くなってしまったので文章だけにしますが、団地内をかなり車が行きかっているんですよね。センターゾーンにバス停もあります。近隣住区論では幹線道路は団地の中には配置しないのですが、団地を歩いていてわかりました。勾配がきついんです(笑)だから、歩車分離をして安全を高めるよりも、自動車の利便性を取ったのだと思います。そういった作り手の住環境を改善するという理念や思想を感じ取ることができることが、1970年代ごろまでに造成された団地の魅力です。
それがマイナスの方向で作用してしまった滝山コミューン1974で有名になった滝山団地のケースや、住環境の整備に一応のめどが立った以降の消費する商品となってしまった公団住宅の話もありますが、それは次の機会で。
とにかく竹山団地の人工池。一見の価値ありです。